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株式会社パム 代表取締役社長

長嶺由成

ー 20周年を迎えられた率直な感想をお聞かせください

長かったようにも短かったようにも思いますが…、どちらかというと長い印象ですね。正直なところ、20年かかってまだここまでか、と思う部分が大きいかもしれません。逆に言えば、「これからだ」ということでもあるのですが。 私は若い頃、リクルートに勤めていました。新しいことをやるのが好きで、クリエイティブな仕事がしたかったので、ニッチなメディアをたくさん作っていたリクルートを面白そうだと感じて入社しました。その後、会社がニューメディアの通信事業に乗り出して、そこでインターネットに出会い、それが今やっていることにつながったんです。 「旅行で地域貢献をする」という目標を掲げて会社をおこしたわけですが、始めた当時は、私ともう一人のメンバーの二人だけ。社員数や売上で見ると、会社の規模は大きくなっていますが、ただ、私が目指しているのは世の中に対する影響度というか、ファンの数なんですね。当社の媒体を通して、掲載したお客様や、実際に利用した方からの声がもっともっと全国から聞こえるようにしたい。その点からすると今はまだ富士山の3合目くらいですね。

ー この20年で印象深かった出来事にどんなことがありますか?

一番しんどかったのは、創業時に取り組んだPDA事業でお金がなくなった時でしたね。焦りはもちろんありましたし、何かヒントを掴もうと動き回りました。じっとしていても辛くなるだけですから。でも会社がつぶれると考えたことは、これまで一度もないですね。自分的にどん詰まりっていうことはあり得ないと思っていて。考えれば打つ手はいくらでもあるわけですから。学生の時から何度も読んでいる本に、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」があるんですが、その中で龍馬が言っているんです。『行き詰まってしまった、なんてないよ』と。 逆に、嬉しかったことで印象に残っているのは、PDA事業の次の一手として「TABINCHU」という情報誌を始めた時に、広告を掲載したお客様から「広告を見てお客さんがこんなに来てくれたよ」と言われたことですね。情報誌の広告はお客様からそのお金を預かっているという感覚なんです。預かっているからもちろん返さなくてはいけない。それがお店への送客なわけです。だから、掲載したお店の反響があることは、自分の会社の売上が上がること以上に嬉しかったですね。 今思い返すと、会社の成長で一つ、印象に残っていることがあります。何年目のことかは、はっきりとは覚えていませんが、パートナー(社員)との忘年会で初めて会場を借りた時、みんながステージで楽しそうに騒いでいるのを見たら、パムという一つのステージでみんなが自分の人生を過ごしていることが感じ取れて、とても嬉しかったですね。

ー 株式会社パムの魅力はどんなところにあると思いますか?

一つは、会社が地域貢献や社会貢献を事業にしていることだと思います。そしてもう一つは、仕事を通して確実に成長できること。定期的に行っているパートナー向けのアンケートで「成長実感」という項目があるんですが、結果としてそれが挙がっています。自分たちでもそれが感じられている。仕事で得るのは、何も給料だけではない。成長実感、というのも、立派な報酬です。

ー 20周年を迎えた今、パートナーに伝えたいこととは?

旅行ファンを、世の中を動かすメディアを、みんなで一緒に作っていきたい。 パートナーみんなが周りの人たちに「これは自分が作ったんだ」と言えるようにしたいですね。そのためには、当社の行動規範にもある「チャレンジ」の気持ちをずっと持ち続けて欲しい。自分もその姿勢でずっとやってきましたから。 パムは10周年を迎えた頃に、パートナーの数がかなり増えたんです。一般的な経営者の視点からすると従業員をコストと考えるので、企業価値を高めるためにはコストを抑えなくてはいけない。でも私にとっては、従業員は収益を一緒に増やして分け合う仲間というイメージなんですね。売上はお客さんからの喜びの声と同じ。それが会社に入って来た時、分ける人がたくさんいた方が嬉しいじゃないですか。だから従業員が増えることは私の喜びでもあるんですよね。

ー これから取り組みたいこと、向かう先について教えてください

今取り組み始めたのは、体験価値の高い旅行商品を提供する活動です。スペックで測れるような商材ではなく、情緒面をくすぐる商材です。 私たちが提案する地方の旅行というのは、地域の人と旅行客を結びつけて、そこに会話が生まれるようなものにしたいんです。例えば、宿の人たちとの会話があって、宿自体を楽しめる旅行。そんな体験価値の高い商品を考えています。それをまずは日本人向けに、全国で提供できるようにしたい。そしてその次には、外国人をターゲットに展開する。それが当面の目標ですね。今、インバウンドは避けて通れません。だから今後はどんどん取り組んでいきたい。そのために、まずは、日本人が満足するサイトを作ることです。それがインバウンド客の満足につながると思います。かなり高い目標ですが、2030年頃までには地方送客というジャンルにおいて、宿泊旅行でもっとも送客する会社になりたいですね。 また、沖縄から海外へ進出することも考えています。当社がやっている事業をまずはタイやインドネシアなどの東南アジアに展開する。実際、レンタカー事業の海外展開はすでに一歩を踏み出しました。今は海外のレンタカー予約の企業が日本に入り始めています。そうした背景もふまえると、守りだけでは戦えない。 競合に勝つ力をつけて、挑戦していきたいですね。

プロフィール

長嶺 由成 Nagamine Yoshinari

Profile

2000年4月、株式会社パムを設立。前職は株式会社リクルートホールディングスにて情報誌の営業、ITメディアの企画営業を担当。趣味はゴルフと旅行。国内旅行では44都道府県まで制覇。小さい頃から新しいことをやるのが好きで、性格は心配性で慎重派。最近の楽しみは3人目として生まれた娘と過ごす時間。